ビッグデータ分析の手法や活用方法を解説!メリットは?ツールの使い方は?
IT業界に限らず、見聞きすることが増えた「ビッグデータ」というワード。膨大な量のデータのことを指し、近年ではビッグデータの分析やその活用に注目が集まっています。
本記事では、ビッグデータ分析の基礎知識、ビッグデータ分析のメリット、リスク、手法、分析ツール、分析のポイントについて解説し、ビッグデータの活用事例やビッグデータ分析に関するよくある質問をご紹介します。
IT業界やビッグデータ、データ分析に興味のある方は、ぜひ最後までご覧ください。
目次
ビッグデータ分析とは何?
ビッグデータとは、企業がビジネスにおいて処理を求められる膨大な量のデータのことです。ビックデータ分析では、ビックデータを分析し、ビジネスにおいて有益な情報や知見を得ることを目的としています。
近年、世界的にデータ量が年々増加しており、ビッグデータを解析する技術の需要は今後ますます拡大すると予想されています。
ビッグデータの3Vの概念
ビッグデータには「3V」という概念があります。
3Vとは、「Volume(量)」「Velocity(速度)」「Variety(種類)」の3つのVをとったものです。また、データの「Veracity(正確さ)」「Value(価値)」を加えた5Vという考え方もあります。
どちらの概念も大量のデータと向き合う際に求められる要素をまとめたもので、ビッグデータ分析において重要な要素です。
普通のデータとは何が違う?
ビックデータという概念が生まれる前からある普通のデータは、決まった形式と構造を持っており、構造化データと呼ばれています。
一方、ビックデータは3Vの中に「Variety(種類)」という要素が入るように、種類が豊富なため、形式の定まっていない非構造データが中心となって構成されています。
ビッグデータ分析の5つのメリット
ビッグデータ分析をおこなうメリットには、以下の5つがあります。
- スムーズな意思決定
- パフォーマンス向上と効率化
- ターゲティング支援
- ビジネスチャンスの発見
- 予測分析とリスク管理
それぞれ詳しく解説します。
スムーズな意思決定
ビッグデータ分析の結果から客観的な予測ができれば、意思決定がスムーズにおこなえます。
企業の重要な判断でもビッグデータ分析の結果を用いれば、スムーズに意思決定を下せるでしょう。
パフォーマンス向上と効率化
ビッグデータ分析を通じて、仕入れやシフト、スケジュールなどの調整をおこなうことで、業務の最適化が可能となります。
分析結果から得られる予測データを活用することで、従業員のパフォーマンス向上や業務の効率化を図れるのは、ビッグデータ分析の大きなメリットです。
ターゲティング支援
顧客に関する分析により、ターゲティングの精度を向上させることが可能です。
ビッグデータ分析は、顧客の行動や購買傾向などをより深く理解することができるため、顧客のニーズを予測してマーケティング戦略の策定に役立てられます。
また、ビッグデータ分析によって顧客それぞれの行動や嗜好を理解できれば、1人ひとりに合わせたサービスや商品を提供できるため、顧客満足度の向上にも繋がるでしょう。
ビジネスチャンスの発見
ビッグデータ分析はさまざまな種類のデータを扱うため、新たなビジネスチャンスを発見できる可能性があります。
顧客の隠れたニーズや傾向を発見し、それらを新しいサービスや製品を開発するきっかけに繋げられれば、企業の強みとなるでしょう。
ビッグデータ分析は、新たな価値やビジネスチャンスを発見するために有効な手段です。
予測分析とリスク管理
ビッグデータ分析をおこなうことで、商品の売上トレンド、顧客の購買傾向や行動、市場の変化などを予測でき、これらを企業の生産計画や戦略に役立てることができます。
予測分析によって販売計画を立てられるだけでなく、商品が売れにくい時期も予測できるため、経済的なリスク管理にも役立つでしょう。
ビッグデータ分析のリスクと注意点
ビッグデータ分析をおこなう際は、以下のようなリスクと注意点について抑えておきましょう。
- プライバシーの侵害
- 時間とコスト
- データの信頼性
それぞれ詳しく解説します。
プライバシーの侵害
個人に紐づけられたデータは厳重に管理しなければならず、使い方によっては個人に不利益を及ぼす可能性があります。
顧客の持病、購買記録、講座情報などは、第三者に知られてよいものではなく、もし知られてしまうと情報漏洩となるほか、詐欺などの犯罪に利用されるリスクがあります。
そのため、ビックデータ分析の際には、徹底した情報管理体制を整え、担当者には情報セキュリティの教育をおこない、プライバシーの侵害にならないようにきちんと管理しましょう。
時間とコスト
ビッグデータ分析をおこなうには、元となるデータが必要です。そのデータは必ずしもスムーズに利活用できる形にはなっておらず、場合によっては紙から電子データへの変換などが必要なこともあります。
この作業は非常に膨大になることがあり、数か月単位で人員、時間、コストをデータ分析前に費やすことになります。
さらに、データの管理や分析をおこなう技術者の確保または育成にもコストが必要なため、ビッグデータ分析には時間やコストが膨大にかかることを認識しましょう。
データの信頼性
ビッグデータ分析に用いるデータに信頼性があるかどうかは、必ず確認するべきポイントです。
分析に用いるデータに不一致、重複、欠損、誤りがないかチェックするデータクレンジングを必ずおこない、信頼できる正しいデータをそろえましょう。
不完全または不正確なデータは分析結果の信頼性を損ない、データクレンジングをおこなわずにビッグデータ分析をすると、誤った意思決定を招いてしまいます。
データクレンジングは手動でもおこなうことができますが、データ量が膨大な場合などは専用ツールを用いると良いでしょう。
ビッグデータ分析の6つの手法
ビッグデータ分析には、主に以下の6つの手法があります。
- クロス集計
- クラスター分析
- アソシエーション分析(マーケットバスケット分析)
- ロジスティック回帰分析
- 決定木分析
- 主成分分析
それぞれ詳しく解説します。
①クロス集計
クロス集計とは、データを属性で分類し、その属性ごとの傾向やニーズを把握することができる分析手法です。
例えば、顧客を性別、年齢、居住地などの属性に分類し、それぞれのニーズを把握するためなどに用いられます。
複雑な計算が不要な分析手法で、アンケート集計や世論調査などにも活用されています。
②クラスター分析
クラスター分析とは、ビッグデータの中から特定の集団を見つけ出し、その特徴について把握する分析手法です。
例えば、ある購買データから「10代後半から20代前半の女性で、類似する化粧品を同時期に購入した」という集団を把握することができます。
クラスター分析は、膨大なデータの中から共通する特徴を持つ集団を見つけ出すことができるため、顧客の傾向によって同様のアプローチを展開できるなど、効率的なプロモーションが可能になります。
③アソシエーション分析(マーケットバスケット分析)
アソシエーション分析は、データ同士の相関性を明らかにする分析手法です。マーケットバスケット分析とも呼ばれています。
例えば、商品Aと商品Cの販売データから「商品Aと商品Cは一緒に購入されることが多い」ということがわかったとします。
店舗販売であれば、商品Aと商品Cを並べて陳列したり、ECサイト(※)であれば相互におすすめ商品に設定したりして、顧客の購買意欲を高める戦略に活かすことができます。
※ECサイトとは、インターネット上で商品を販売するウェブサイトのこと
④ロジスティック回帰分析
事象の発生確率を予測する分析手法が、ロジスティック回帰分析です。
ロジスティック回帰分析は、分析結果から得られる答えが確率のため、「1(発生する)」と「0(発生しない)」の間の数値となります。
例えば、マーケティングでは商品が売れる確率を予測したり、医療現場では病気の発症率を予測したりと、業界によってさまざまな場面で活用される分析手法です。
⑤決定木分析
決定木分析とはデータを木の枝のように分けることで、複雑なデータを理解しやすくする手法です。
それぞれの「枝」は特定の判断基準や条件に基づいてデータを2つに分けるもので、これを繰り返すことでデータが木のような形になります。
例えば「商品Bが地域Dでよく売れる」というデータを「男性・女性」「20代・30代」「独身・既婚」という条件で分けてみましょう。
商品Bを購入した顧客データを「男性・女性」「既婚・未婚」「20代・30代」などの条件で分けていくと、より商品Bに興味を示し購入した客層について詳しく知ることができます。
このようにデータを細分化すると、「商品Bは地域Dの20代独身女性には売れやすいが、30代既婚男性には売れにくい」という詳しい情報について知ることができます。
⑥主成分分析
主成分分析は、複数の要因を持つデータから一部の要因を排除して単純化する手法です。
データとは基本的に要因が多いほど正確性を増しますが、分析結果が複雑になり理解しにくくなってしまいます。
そこで主成分分析を用いて一部の不要な要因を排除することで、複雑なデータを単純化して理解しやすくします。
例えば、ある顧客データから「流行に強い関心がある」「新品しか買わない」という2つの要因が得られたとしましょう。これらの要因を1つにまとめると「新しいもの好き」と単純化することができます。
ただし、単純化によって一部の要因を排除するため、元のデータよりも情報量が少なくなる点には注意が必要です。
ツールを使用したビッグデータの分析方法
データ分析に使えるツールには、以下の2種類があります。
- 企業が蓄積しているデータを意思決定に役立てるための「BIツール」
- 膨大なデータを分析し、有効な知見を得るための「データマイニングツール」
BIツール
BIとはビジネスインテリジェンス(Business Intelligence)の略で、企業が蓄積しているデータを意思決定に役立てることを意味します。BIツールとは大量のデータを整理・分析し、その結果の可視化することで、ビジネスの意思決定に貢献するITツールです。
BIツールは売上分析や顧客行動分析、製品評価、市場動向予測などの役にも立ちます。また、ダッシュボード機能により、リアルタイムでビジネスの状況を把握することも可能です。
近年では、人工知能や機械学習を取り入れたより高度なBIツールも普及しています。
データマイニングツール
データマイニングツールとは、膨大なデータを分析し、有効な知見を得るためのツールです。
専門的な分析機能を持ち、ビッグデータ分析にかかる労力を大幅に軽減する役割を持ちます。
機能や特徴はBIツールと共通する部分が多いものの、データマイニングツールはよりデータ分析に特化したツールであると認識しておきましょう。
ビッグデータ分析時のポイント
ビッグデータの分析をおこなう際は、以下のポイントを抑えておきましょう。
- 利用目的の明確化
- データの安全な保管
- 分析の反復
それぞれ詳しく解説します。
利用目的の明確化
ビッグデータ分析をおこなう前に、分析の目的を明確にしましょう。
「分析結果をもとに、何を知りたいのか?」「分析結果を何の分野に活かしたいのか?」など、目的を明確化してからビッグデータ分析をおこなってください。
例えば、在庫管理を最適化したい、顧客満足度を高めたいなどが目的に該当します。
目的を明確化することで必要なデータを適切に収集・分析することができ、より有効な分析結果を得られるでしょう。
データの安全な保管
ビッグデータ分析は膨大なデータを取り扱うため、その保管にも気を配る必要があります。
ビッグデータを扱うための管理サービス「DWH」なども充実しているため、導入を検討しても良いでしょう。
DWHはデータウェアハウス(Data Warehouse)の略で、外部からの攻撃を防いだり、データを暗号化したりと、データを安全に保管することができるしくみです。
ビッグデータ分析をおこなう際は、データを安全に保管できる環境も備えるようにしましょう。
分析の反復
ビッグデータ分析は、一度で有効な結果を得られるものではありません。試行錯誤を繰り返しながら、最適な分析方法を見つける必要があります。
データをさまざまな角度から分析したり、分析手法を変えたりしながら、より有用な結果を得られるように何度も分析を繰り返しましょう。
ビッグデータの実際の活用事例
ビッグデータを実際に活用した事例を3つ紹介します。
- ECサイトの改善による購買率やアクセス数の増加
- PHRの取り組みによる医薬品の創薬や病気の予防
- 品質テストへの応用によるコスト削減
それぞれ詳しく解説します。
ECサイトの改善
ECサイトの商品購入や閲覧履歴を分析することで、売上拡大やアクセス数増加につながる有効な知見を得ることができる可能性があります。
例えば、訪問履歴と顧客情報を分析し、特定の年齢層や性別などに対して集中的に広告を出すことで、購買率やECサイトへのアクセス数が増加した事例があります。
PHRの取り組み
PHR(Personal Health Record)とは、個人の健康診断結果や受診記録を生涯保管しようとする考え方です。日本では、母子手帳やお薬手帳の電子化などによってPHRの分野でもビックデータ分析が進んでいます。
例えば、健康診断結果や受信記録を分析することで、医薬品の創薬や病気の予防などに活かすことができます。
品質テスト
品質テストのコスト削減のため、ビッグデータを活用する事例があります。
製造過程で集めた品質データを品質テストの段階で活用することで、品質に疑いのある製品にのみ重点的なテストをおこなうことが可能になります。
半導体メーカーのIntel(インテル)では、実際に品質テストにビッグデータ分析を活用し、品質テストにかかるコストを300万ドル削減することに成功しています。
ビッグデータ分析に関するQ&A
ここでは、ビッグデータ分析に関するよくある質問にお答えします。
Q.ビッグデータ分析に専門家は必要?
A.ビックデータ分析はツールを活用することで、ある程度の分析が可能ですが、専門家のサポートがあるとより有効な知見を得られるでしょう。
データサイエンティストやデータアナリストなど、専門の資格や知識、スキル、実績を持つ専門家を雇ったり、データ分析の専門企業に依頼したりするなどの方法があります。
Q.ビッグデータ分析はExcelでおこなえる?
A.ビッグデータ分析をExcelでおこなうことは、不可能ではありません。
ただし、Exceでは膨大なデータの処理には限界があり、データのクラッシュやエラーを避けるためにも専用ツールの活用をおすすめします。
Q.ビッグデータ分析のデータはどうやって収集する?
A.ビッグデータ分析をおこなうためのデータ収集には、以下のような方法があります。
- 公式サイトからダウンロードする
- WebAPIを利用する
- cookieを発行する
- データ連携ツールを使う
- IoT機器を使う
- インタビューをおこなう
- オープンデータ(公的機関が提供するデータ)を使う
企業の公式サイトや政府・地方公共団体などの公的機関のWebサイトなどに掲載されている正式なデータを集めることは、基本的な情報収集の方法です。
また、Web上で提供されるデータを共有できるWebAPI、ユーザーの行動を追跡しデータ化できるCookieなどを用いれば、ユーザーのニーズを汲み取ったり行動の傾向を把握したりできます。
データ連携ツールやIoT機器を導入すれば、実際の使用履歴などに関するデータを直接的に収集することも可能です。
この他にインタビューをおこない、実際の声を集めることでデータを集めることも可能です。
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まとめ
企業がビジネスにおいて膨大なデータを分析し、有益な情報や知見を得る「ビッグデータ分析」。ビッグデータ分析には、スムーズな意思決定、パフォーマンス向上と効率化、ターゲティング支援、ビジネスチャンスの発見、予測分析とリスク管理などのメリットがあり、多くの企業が活用しています。
一方で、ビッグデータ分析にはプライバシー侵害のリスク、時間とコストがかかる、データの信頼性によって結果に変動があるなどのデメリットもあります。ビッグデータ分析をおこなう際は、リスクや注意点を踏まえて利用しましょう。
ビッグデータ分析には主に6つの手法があり、それぞれ得られる知見は異なります。ビッグデータ分析の目的を明確化することで、適切な分析方法を選べるようになります。
また、実際にビッグデータ分析をおこなうときは、利用目的の明確化、データの安全な保管、分析の反復の3つのポイントをおさえておくことで、より効果的で効率的なデータ分析が可能になります。
実際の活用事例を参考にしつつ、この機会にビッグデータ分析について詳しく知り、活用を検討してみてはいかがでしょうか。