リスキリングとは?補助金・助成金など個人向けのリスキリング支援を一挙紹介!
社会人の学び直しや企業の生産性向上など、さまざまなシーンで注目されている「リスキリング」。興味を持ったことがある方や、実際にこれからリスキリングを検討しているという方も多いのではないでしょうか?
本記事では、リスキリングの概要をお伝えしたうえで、リスキリングで利用できる補助金や助成金など、個人向けの支援制度をまとめて紹介します。
リスキリングを検討している個人の方は、ぜひ自分が使える支援制度がないかチェックしてみてください。
目次
リスキリングとは?
リスキリングとは、社会人の学び直しの1つです。自分の市場価値を高めるために、新たなスキルを学び身につけることを指します。
リスキリングでスキルや資格を取得すれば、収入アップやキャリアアップが見込めます。通信制大学やスクールなどを利用して学び直しができる制度なども充実してきているため、利用を考えている方も多いでしょう。
リスキリングとリカレント教育の違いについて
リスキリングによく似た言葉に、リカレント教育というものがあります。よく似た意味の言葉ですが、厳密には異なるため覚えておきましょう。
リカレント教育では離職や休職などをして仕事を一度休んで、教育機関などを利用してスキルの習得を目指します。
一方で、リスキリングは仕事と並行して勉強を進めていく方法を指します。
また、リスキリングは企業が主体となる一方で、リカレント教育は個人が主体となって動くという違いもあります。
リスキリングやリカレント教育については、「リスキリング」「リカレント教育とは」で詳しく解説しています。
リスキリングを支援する補助金・助成金がある
リスキリングを受ける場合、個人に対してもさまざまな支援制度があります。補助金や助成金を活用することで金銭的なハードルを下げることができるため、ぜひ事前に確認しておきましょう。
株式会社学研ホールディングスの調査によれば、リスキリングへの支援制度の認知度は一般教育訓練給付金※の認知度が27.5%、特定一般教育訓練給付金※の認知度が20%、専門実践教育訓練給付金※の認知度が17.5%です。
どの制度も認知度がとても低く、金銭的な理由でリスキリングを諦める大きな要因となっています。
※支援制度についての詳細は後述します。
個人向けのリスキリング支援が拡充されている背景
個人向けのリスキリング支援が拡充されている背景として、金銭的なハードルを下げる目的があります。
株式会社学研ホールディングスの調査では、支援制度への認知度とともにリスキリングに取り組んでいない人に向け、その理由も質問しています。
「何をしたらいいのか分からない」が1番の理由でしたが、続いて「金銭的余裕がない」という回答が多い結果となりました。
また、金銭的負担が減るならリスキリングを受けたいと考えている方が約75%にもなることが明らかになっています。
つまり、支援が増加・認知されればリスキリングする人も増加することが見込まれるため、支援制度の拡充が積極的に進められているのです。
【ポイント】補助金・助成金・給付金の違いと注意点
リスキリングで使える補助金、助成金、給付金には違いがあります。ここでは、補助金、助成金、給付金についてまとめて解説します。
補助金 | 国や各自治体が目指す方向に合わせ、事業者の取り組みを支援する経費の一部を給付する制度。 審査があり、申請で必ずもらえるわけではない。 |
助成金 | 国や各自治体が事業者をサポートするための制度。受給条件を満たしていれば受け取れる可能性が高い。多くは厚生労働省が発表している。 |
給付金 | 国や各自治体が事業者や個人を支援する制度。個人で申請できるものが多い。受給条件が満たされていれば、申請することで受け取れる。 また給付金は事業に限らず一般的な国民に向けたものも多い。 |
リスキリングを支援する補助金・助成金一覧
リスキリングを支援する補助金と助成金には、以下のようなものがあります。
補助金・助成金 | 金額 | 要件 | |
リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業費補助金 | 最大で費用の70%(56万円まで) | 以下の2点を満たすこと ・企業等と雇用契約を締結している在職者 ・雇用主の変更を伴う転職を目指している者 | |
人材開発支援助成金 | コースや条件によって異なる | コースや条件によって異なる | |
教育訓練給付制度 | 一般教育訓練 | 受講費用の20%(最大10万円) | 以下の2点を満たすこと ・雇用保険に加入している ・週20時間以上労働に従事している |
特定一般教育訓練 | 受講費用の40%(最大20万円) | ||
専門実践教育訓練 | 受講費用の70%(最大56万円) | ||
求職者支援制度 | 月額10万円 | 以下の4点を満たすこと ・雇用保険に加入していない ・一定額以下の収入があり正社員への転職を目指している ・雇用保険の受給が終了している ・本人の月収が8万円以下、世帯収入が月30万円以下である | |
母子(父子)家庭自立支援給付金事業 | 自立支援教育訓練給付金 | 受講にかかった費用の60%(上限は講座により20~160万円) | 以下の3点を満たすこと ・児童扶養手当の支給を受けている、または同等の所得水準にある ・ひとり親である ・対象の教育訓練を受講し修了している |
高等職業訓練促進給付金等事業 | 月額7万500~14万円修了時に住民税課税世帯に2万5,000円、住民税非課税世帯に5万円 | 以下の3点を満たすこと ・児童扶養手当の支給を受けている、または同等の所得水準にある ・ひとり親である ・特定の資格を取得するために養成機関で学ぶ |
支援サイト | 概要 |
---|---|
マナビDX(旧巣ごもりDXステップ講座情報ナビ) | デジタルスキルを基礎から学べる支援サイト。無料の動画や講座、講座検索などができる。 |
マナパス(社会人の大学や大学院などでの学びを応援するサイト) | 細かい条件を指定して、学び直しの講座を検索できるサイト。支援制度についても最新情報を発信している。 |
以下では、5つの補助金・助成金と2つの支援サイトについて解説します。
仕事を続けながら資格を取得する際に受けられる補助金については「働きながら 資格 補助金」でも紹介しています。
1:リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業費補助金
リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業費補助金は、補助事業者が支援できる対象者の要件を満たせば補助事業者を経由して給付金を受け取れます。
補助金対象者の要件は以下の通りです。
- 企業等と雇用契約を締結している在職者
- 雇用主の変更を伴う転職を目指している者
企業等と雇用契約を結んでいるうえで、雇用主の変更を伴う転職を目指している方が支援の対象となっており、年齢制限などはありません。
補助金の内容は最大70%、56万円までです。
事業に採択された補助事業者のリスキリング講座を修了すると、受講料の50%、受講後転職して1年就業した場合20%の給付が受けられます。
2:人材開発支援助成金
人材開発支援助成金は、厚生労働省がおこなっている助成金制度です。
助成金を受けるには、事業者、労働者、訓練、経費、対象条件といった細かな条件を満たす必要があります。細かい条件や受けられる助成金の金額については、厚生労働省の公式サイトをチェックしましょう。
人材開発支援助成金には、以下の7つのコースがあります。
- 人への投資促進コース
- 事業展開等リスキリング支援コース
- 人材育成支援コース
- 教育訓練休暇等付与コース
- 建設労働者認定訓練コース
- 建設労働者技能実習コース
- 障害者職業能力開発コース
コースにより申請方法が異なる場合や、年度によってアップデートされていることもあるので必ず申請前に確認してください。
3:教育訓練給付制度
教育訓練給付金制度は、キャリアチェンジやスキルアップを目標として資格取得に向けて講座や大学、大学院の授業を修了した場合、費用の一部が支給される制度です。
給付制度を受けるための要件は以下の通りです。
- 雇用保険に加入している
- 週20時間以上労働に従事している
上記の2つに該当している場合、教育訓練給付制度の対象となります。幅広い講座が対象となっており、支給額が費用の20〜70%と高めであることが特徴です。
また対象講座と給付金の金額は以下の通りです。
教育訓練 | 該当する講座や大学、大学院の授業 | 支給額 |
---|---|---|
一般教育訓練 | 中小企業診断士、TOEIC、TOEFL、日商簿記など | 受講費用の20%(最大10万円) |
特定一般教育訓練 | 社会保険労務士、税理士、行政書士、ITSSレベル2以上のIT関連資格など | 受講費用の40%(最大20万円) |
専門実践教育訓練 | MBAや法科大学院など専門職の大学院ビジネスやデザインなどの専門学校AI、IoT、データサイエンスなどの第四次産業革命スキル習得講座など | 受講費用の50%(年間最大40万)なお資格取得等をし、かつ訓練修了後1年以内に雇用保険の被保険者として雇用された場合は、受講費用の20%(年間上限16万円)が追加で支給される。 |
4:求職者支援制度
求職者支援制度は、要件を満たすことで月10万円の給付金を受け取れる制度です。対象の訓練期間は2〜6ヶ月で、各管轄のハローワークで申請ができます。
求職者支援制度を受けられる要件は以下の通りです。
- 雇用保険に加入していない
- 一定額以下の収入があり正社員への転職を目指している
- 雇用保険の受給が終了している
- 本人の月収が8万円以下、世帯収入が月30万円以下である(世帯全体の金融資産が300万円以下)
- 訓練実施日全てに出席する
パートやアルバイトで働いている方が対象であり、雇用保険に未加入または受給が終了していることが条件です。また収入にも条件があるため、申請前に必ず確認してください。
5:母子(父子)家庭自立支援給付金事業
母子(父子)家庭自立支援給付金事業には「自立支援教育訓練給付金」と「高等職業訓練促進給付金等事業」の2種類あり、要件を満たすことで受講費用の一部支給や毎月の生活支援が受けられます。
自立支援教育訓練給付金を受けられる要件は以下の通りです。
- 児童扶養手当の支給を受けている、または同等の所得水準にある
- ひとり親である
- 対象の教育訓練を受講し修了している
上記3つの要件をすべて満たしている場合に、受講にかかった費用の60%の支給が受けられます。受講した講座によって、上限は20〜160万円と幅がある点に注意してください。
高等職業訓練促進給付金等事業を受けられる要件は以下の通りです。
- 児童扶養手当の支給を受けている、または同等の所得水準にある
- ひとり親である
- 特定の資格を取得するために養成機関で学ぶ
上記3つの要件をすべて満たしている場合に、月7万500〜14万円の生活支援が受けられる他、住民税課税世帯なら2万5,000円、住民税非課税世帯なら5万円の給付金を修了時に受けられます。
6:マナビDX(旧巣ごもりDXステップ講座情報ナビ)
マナビDXは、デジタルスキルの取得を支援するためのポータルサイトです。デジタルリテラシー講座とデジタル実践講座の2種類があり、基礎からデジタルスキルを習得できます。
無料の動画やリスキリング講座もあり、目指すスキルに合わせて講座を調べることもできる便利なサイトです。
7:マナパス(社会人の大学や大学院などでの学びを応援するサイト)
マナパスとは、社会人が大学や大学院で学び直しをするための講座情報や、リスキリングの支援制度の情報を発信するサイトです。
場所、学校種別、課程、オンライン受講の可否、金額、分野、資格などを細かく指定して講座を検索でき、無料の講座を探すこともできます。
学び直しに役立つさまざまな情報を取得できるサイトなので、リスキリングを検討しているなら一度はチェックすることをおすすめします。
自治体で行われている個人向けリスキリング支援
ここでは、自治体が独自におこなっている個人向けのリスキリング支援を紹介します。
補助金・助成金 | 概要 | 要件 |
---|---|---|
東京都:DXリスキリング助成金 | 対象経費の2/3(最大年間64万円)の助成 | 以下の3点を満たすこと ・みなし大企業を除く中小企業や個人事業主 ・訓練時間が20時間以上である ・その他都が定める要件に該当すること |
東京都:短期集中型資格取得支援訓練 | 無料のeラーニングを含む資格取得のための合宿を実施 | 以下の3点を満たすこと ・対象の資格取得を目指している、eラーニングでの訓練全てを受講し、合宿での訓練日程に全日程参加が可能な方で、資格試験を受験できる方 ・東京しごとセンターに利用者登録をしている、また訓練修了後に東京しごとセンターを利用して就職活動を行う意志のある方 ・都内在住(もしくは在勤)で休職中または非正規雇用で働いている |
大阪府:スキルアップ支援金 | 指定の講座受講にかかった費用の1/2(上限20万円)、もしくは2/3(上限なし)を支給。補助率は講座によって異なる。 | 以下の2点を満たすこと ・1年以上継続して転職活動または求職活動をしている大阪府民 ・雇用保険に未加入であるか、受給資格を失って1年以上である |
岩手県:デジタルリスキリングセミナー | DXによる業務改善について学べる、無料のコース別講座を実施 | 職場・業務をデジタル化したい・興味のある社会人 |
岐阜県:ものづくりDX人材育成リスキリング事業 | 企業のDXを推進するDX人材を育成・確保するためデジタル技術に特化した講座を無料で実施 | 県内に事業所を置く企業(主に製造業)に就職・転職を希望する者、 または事業参画企業に従事しており、企業から本事業への参加を推薦された者 |
広島県:広島県未来チャレンジ資金 | 大学院などの専門課程での学びを対象に、学費を無利子で貸し付けているその後9年のうち8年を広島県内で就労した場合貸付金は全額返還免除となる | 40歳未満の日本国籍を有するもしくは永住権のある者、企業又は官公庁等における実務経験を2年以上有する者などの要件を満たしたうえで、修了後に広島県内の企業での就職を志望している |
東京都:DXリスキリング助成金
DXリスキリング助成金は、「中小企業人材スキルアップ支援事業」とも呼ばれる制度です。
対象は中小企業や個人事業主で、以下のような区分があります。ちなみに、みなし大企業に分類される場合は対象外です。
業種区分 | 資本金額・出資額 | 常時従業員数 |
---|---|---|
小売業・飲食業 | ~5,000万円 | ~50人 |
サービス業 | ~5,000万円 | ~100人 |
卸売業 | ~1億円 | ~100人 |
その他の業種 | ~3億円 | ~300人 |
訓練の条件、対象経費、対象受講者などについて細かく要件が定められているため、申請前に必ず公益財団法人東京しごと財団の公式サイトを確認してください。
東京都:短期集中型資格取得支援訓練
短期集中型資格取得支援訓練は、ITパスポート、3級ファイナンシャルプランニング技能士、宅地建物取引士などの資格取得のための講座を提供する支援です。
eラーニングと合宿を組み合わせて講座を実施し、受講料、テキスト代、合宿費用は無料であるため交通費と資格の受験料さえ用意できれば受講が可能です。
公式サイト:短期集中型資格取得支援訓練 | その他の職業訓練 | TOKYOはたらくネット
大阪府:スキルアップ支援金
スキルアップ支援金は、大阪府が独自に実施しているリスキリング向け支援制度です。
対象者の要件は以下の通りです。
- 1年以上継続して転職活動または求職活動をしている大阪府民
- 雇用保険に未加入であるか、受給資格を失って1年以上である
両方の要件を満たしている場合、スキルアップ支援金への申請が可能です。
支援内容としては、指定の講座受講にかかった費用の1/2、もしくは2/3が支給されるというもので、対象講座の中には通信制のものも含まれます。
スキルアップ支援金の対象となるのは、以下のような講座です。
- ITパスポート
- WEBデザイナー
- マイクロソフトオフィススペシャリスト
- 語学(英語など)
- ファイナンシャルプランナー
- 日商簿記
- CAD利用技術者試験
- 宅地建物取引士
- 医療事務
- 介護職員初任者研修
申請は1人1回、1講座までとなっており、補助率が1/2の講座の場合上限は50%、2/3の講座の場合は上限はありません。
公式サイト:大阪府スキルアップ支援金について|大阪府
岩手県:デジタルリスキリングセミナー
デジタルリスキリングセミナーは、岩手県がおこなっている支援制度です。
DXによる業務改善について解説する講座で、初級と中級の2つに分かれています。「Chat GPT」「Teams」といったデジタルツールの使用方法や業務分析手法について学ぶことができます。
県内の事業所に勤務する人が対象で、受講料は無料です。
公式サイト:岩手県 – デジタルリテラシー・デジタルリスキリングセミナーのご案内
岐阜県:ものづくりDX人材育成リスキリング事業
ものづくりDX人材育成リスキリング事業は、岐阜県のリスキリング支援制度です。
DX、AI、Pythonでおこなうプログラミングなど、IT化に伴って求められるスキルについて学べる講座を無料で実施しています。
期間中は事業契約企業と雇用契約を締結し、給与が支払われる仕組みである点が特徴です。
対象は、県内企業への求職者や県内企業の従業員です。
広島県:広島県未来チャレンジ資金
広島県では、独自の支援として広島県未来チャレンジ資金を実施しています。
県内産業の発展のために欠かせない人材を育成するために発足した制度で、高度な知識を身につけ広島の企業への就職を希望している方が対象です。
大学院などの専門課程にあたり、修学資金(最長3年間360万円)を無利子で貸与しています。また、修了後9年間で、8年以上広島県内で就業した場合は貸付金が全額免除されます。
新たな知識やスキルを習得なら、開志創造大学 情報デザイン学部(仮称・設置構想中)
開志創造大学 情報デザイン学部(仮称・設置構想中)は完全オンラインで卒業できる通信制大学です。
一度も大学に通わずに、「学士(情報学)」の取得が可能です。
授業は1回15分のオンデマンド授業のため、場所を問わず、スキマ時間を活用して自由に学修を進めることができます。
通信制大学に入って本格的に学び直しをしたいけれど、金銭的に余裕がなく、補助金や助成金がもらえないと現実的に厳しいという方も多いと思います。
ですが、開志創造大学 情報デザイン学部(仮称・設置構想中)は年間学費25万円と、とても学びやすい学費設定のため、社会人の学び直しにぴったりです。
学費を抑えられることにより、補助金や助成金を使わなくても、学び直しを始めやすくなります。
学び直しにかかる費用をなるべく抑えつつ、将来活かせるスキルを身につけたいという方は、開志創造大学 情報デザイン学部(仮称・設置構想中)がおすすめです!
まとめ
社会人の学び直しのうち、自分の市場価値を高められるとして注目されているリスキリング。
そんなリスキリングは素晴らしいものですが、日本では推進が遅れています。その背景には、金銭的な理由でリスキリングを諦めている方が多いこと、またリスキリングに際して利用できる支援制度について知られていないことなどがあります。
リスキリングをする場合、個人でも補助金、助成金、給付金、無料講座といった支援が受けられます。
リスキリングを対象として利用できる支援制度は、本記事で紹介しました。これからリスキリングをしようと考えている方は、ぜひ支援制度を利用して金銭的な負担を軽くしつつスキルアップを目指しましょう。