プロジェクト管理とは?目的や手法、手順を解説
事業やプロジェクトに携わる際に、必要なスキルとして挙げられるプロジェクト管理(プロジェクトマネジメント)。
本記事では、ビジネスにおけるプロジェクト管理とは何か、目的や手法、PMBOK(ピンボック)について、具体的な手順やツールの活用など、プロジェクト管理に関する情報をまとめて解説します。
管理職を目指す方、プロジェクト管理について改めて理解しておきたい方、プロジェクト管理に関する基礎知識をつけたい方は、ぜひ最後までご覧ください。
目次
プロジェクト管理(プロジェクトマネジメント)とは
プロジェクト管理とは、組織が目標を達成するためにプロジェクトに必要なものすべてを管理することを指します。
管理する具体的な対象は、人、モノ、スケジュール、予算などで、これらをきちんと把握し、適切に指示を出すことがプロジェクト管理では求められます。
プロジェクト管理は主にプロジェクトマネージャー(PM)が担当し、プロジェクトメンバーの作業進捗やタスク管理、スケジュール調整、プロジェクト全体の管理などをおこないます。
プロジェクト管理(プロジェクトマネジメント)の項目
プロジェクト管理には、主に以下の5項目があります。
項目 | 概要 |
---|---|
コスト管理 | 費用に関する管理をする |
スケジュール管理 | プロジェクト全体やメンバー1人ひとりの進捗管理をする |
要員管理 | 必要な要員を選定したり配置を設定したりする |
品質管理 | 品質テストに関するタスク管理やスケジュールの効率化などをする |
リスク管理 | 発生しうるトラブルを予測し予防、対処する |
以下では、プロジェクト管理の項目をそれぞれ詳しく解説します。
コスト管理
コスト管理では、プロジェクト全体の予算、実績、見通しなどを管理します。必要なコストを見積もり、限られた予算内でプロジェクトを行うために予算を配分します。
無駄な支出がないか、予算内に収まるか、状況に応じてきちんと資金を管理しなければ、プロジェクトの進行や完了が難しくなってしまうため、重要な管理項目と言えます。
スケジュール管理
納期や期日までにプロジェクトが完了するよう、予定や進捗を管理します。
プロジェクトの進捗に合わせ、途中で計画を変更するなどの修正力や対応力が求められます。
またプロジェクト全体のタスクや進捗だけではなく、プロジェクトに関わるメンバー1人ひとりの進捗状況などについてもきちんと把握して管理する必要があるため、広い視野を持つことやコミュニケーション能力も求められます。
要員管理
プロジェクトに関わるメンバーの管理です。必要な人員の確保や配置をおこない、プロジェクトがスムーズに進むように調整します。
プロジェクト進行中もメンバーの進捗や仕事量・作業量を把握し、適切な管理ができる能力が求められます。
品質管理
成果物や業務の質を管理する項目です。
プロジェクトを通してどれだけの品質を目標とするのか、方針やゴールを明確にすることもプロジェクトマネージャーの仕事に含まれます。
プロジェクト進行中も品質検査や測定方法を定め、目標達成までの経過もきちんと管理する必要があります。
リスク管理
プロジェクトを進めていく中で起こりうるトラブルやリスクについて管理します。
具体的には、予期せぬトラブルによるプロジェクトの遅れを防ぐため、リスクの洗い出しや対処法を検討します。
プロジェクトの進行中は、トラブルが発生しないように監視したり発生したトラブルに対応したりすることも大切です。
プロジェクト管理(プロジェクトマネジメント)の目的
プロジェクト管理の目的は、大きく分けて2つあります。
- プロジェクトの納期や期間を守るため
- プロジェクト達成による利益最大化のため
納期を守り、一定以上の品質での納品ができるようにするためには、プロジェクト全体の管理が欠かせません。
また、納期や期間を守るには、経費や人員、作業の無駄を省くことが重要です。
プロジェクトの開始から完了までの過程にある無駄を洗い出し、省くことでプロジェクトを効率よく円滑に進めることができます。
プロジェクト管理(プロジェクトマネジメント)の手法
実際にプロジェクト管理をおこなうときは、以下のような手法を用います。
手法 | 概要 |
---|---|
WBS(Work Breakdown Structure) | プロジェクトを細かく分けてツリー構造にする |
ガントチャート(Gantt chart) | プロジェクトを分割・タスク化し、進捗状況を可視化する |
アジャイル(AGILE) | 作業をいくつかの工程に分け、工程ごとに評価する |
ウォーターフォール(Waterfall) | プロジェクトを複数の段階に分割し上から順に完了させていく |
EVM(Earned Value Management) | プロジェクト全体の工数(※)、コスト、実績を金銭的な価値に換算する |
各手法について、以下で詳しく解説します。
※工数とは、プロジェクトを完了させるために必要な作業量を人数と時間で表したもののこと
WBS(Work Breakdown Structure)
WBSは、プロジェクトを細かく分けてツリー構造にするプロジェクト管理手法です。
開始前にタスクをすべて洗い出し、管理しやすいレベルまで細分化してまとめるのが特徴です。
どの工程で何をするのか、初期段階でチーム全体に共有できること、優先順位を決めやすいことなどがメリットです。
【例】
作業(担当) | 開始日 | 期限 | 期間 |
---|---|---|---|
作業A(田中) | 9月1日 | 9月7日 | 7日 |
作業B(佐藤) | 9月4日 | 9月11日 | 7日 |
作業C(鈴木) | 9月6日 | 9月14日 | 8日 |
ガントチャート(Gantt chart)
大規模なプロジェクトを小さなタスクに分割して、表で管理する手法です。
ガントチャートでは、WBSに進捗状況が見える表が加わります。作業の進捗状況、開始日、終了日について一目で確認できるため、情報共有もしやすいのがメリットです。
・日付ごとの進捗状況:ピンク、紫、水色
・締め切り日:赤
アジャイル(AGILE)
アジャイルとは、作業工程を複数の段階に分割し、それぞれ評価していく手法です。
最終工程が完了する前に、各工程で検証やフィードバックをおこなうため、こまめな確認と修正ができるというメリットがあります。
ただし、各ステージに集中しすぎるとプロジェクト全体の状況が見えにくくなってしまう可能性があるため、意識的にプロジェクト全体に目を向けることが重要です。
【例】
フェーズ | 進捗状況 |
---|---|
フェーズ1 | 完了 |
フェーズ2 | 未着手 |
フェーズ3 | 進行中 |
フェーズ4 | 評価中 |
上記の表では、フェーズ1の工程が完了しており、フェーズ4が評価をしている段階、フェーズ3は進行中、フェーズ2は未着手の状態ということがわかります。
ウォーターフォール(Waterfall)
ウォーターフォールとは、プロジェクトを複数の段階に分割し、上流工程から順に作業を完了させていく手法です。
進捗管理がしやすく、具体的な要件が固まっているプロジェクトに向いています。
ただしウォーターフォールでは現在おこなっているフェーズが終わるまで、次のフェーズに進むことができず、また完了したフェーズにも戻ることもできないというデメリットがあります。
【例】
フェーズ | 進捗状況 |
---|---|
フェーズ1 | 完了 |
フェーズ2 | 完了 |
フェーズ3 | 進行中 |
フェーズ4 | 未着手 |
EVM(Earned Value Management)
EVMは、コストを軸にした管理手法です。多くの場合、ガントチャートなど他の管理手法と一緒に活用します。
プロジェクトを以下の項目で分析し、管理していきます。
- 出来高計画値
- 投入実績値(実際に発生したコスト)
- 出来高実績値
- 完了時の総予算
4つの項目から算出される、スケジュールの差異やコストの差異から、プロジェクトの進捗状況を把握します。
【例】
上記は投入実績値(水色)、出来高実績値(紺)、出来高計画値(オレンジ)をグラフで示したものです。出来高計画値で示されている最終的なポイント(オレンジの最右)が完了時の総予算として確認できます。
プロジェクト管理(プロジェクトマネジメント)のフレームワーク「PMBOK(ピンボック)」
プロジェクト管理のフレームワークとして知られているものに、「PMBOK」があります。
PMBOKとは、プロジェクト管理の関連知識を体系的にまとめたものであり、プロジェクト管理の世界標準として浸透しているものです。
PMBOKでは品質、コスト、納期の管理を目標としており、10の知識エリアでプロジェクトを管理します。
- 統合管理
- スコープ管理
- スケジュール管理
- コスト管理(原価管理)
- 品質管理
- 資源管理(要員管理)
- コミュニケーション管理
- リスク管理
- 調達管理
- ステークホルダー管理
知識エリアごとに立ち上げから完了までのプロセスを明確化でき、実務においても効率的な管理が可能になります。
プロジェクト管理について学びたい方や、今後管理職に就く可能性のある方は一度学んでおくと良いでしょう。
プロジェクト管理(プロジェクトマネジメント)の具体的な手順
プロジェクト管理の具体的な手順は、基本的に以下の4ステップです。
- プロジェクトの最終目標を明確化する
- 必要なタスクを洗い出す
- 目標達成までのスケジュールを作成する
- 進行中の工程を把握、管理する
各ステップについて、以下で詳しく解説します。
目標設定
最初に、プロジェクトの目標を明確化します。
プロジェクトに関わるチーム全体の意思統一やモチベーション向上に関わる重要なステップです。
目標を明確にすることで、タスクの優先順位を決めやすくなり、スケジュールを立てることができるようになります。また、最終的に目標が達成されたかどうかを評価することもできます。
目標を設定する際は、数字などの具体的なものを入れるようにしましょう。
タスクの洗い出し
目標が明確になったら、必要なタスクをすべて洗い出します。
プロジェクトの進行に必要な工程をタスクとしてリストアップしていき、作業内容、重要度、着手していく順番などを整理するステップです。
担当者の設定や責任者の選定、各タスクの期限も設定しておくことで、後々の管理がしやすくなります。
スケジュールの作成
洗い出したタスクと担当者、責任者などを踏まえ、プロジェクトのスケジュールを作成します。
最終的な納期に間に合うようにスケジュールを組んでいきましょう。
プロジェクトの最終納期に向け、各工程が無理なく余裕をもって進行できるようにスケジュールを作成しましょう。
進捗管理
プロジェクトが動き出したら、作業進捗をこまめにチェックしてスケジュールと照らし合わせながら管理します。
遅れがあれば改善点を探し、計画通りであればそのまま進行しましょう。必要に応じて人員の再配置なども検討してください。
人員、スケジュール、予算、品質など、プロジェクトに関わるあらゆる項目を把握しながら進行しましょう。
プロジェクト管理(プロジェクトマネジメント)ツールの活用
プロジェクト管理に役立つツールは多々あります。
誰もが手軽に使えるツールの例として、Excelが挙げられます。Excelでは表やグラフ作成などが簡単におこなえる他、データ分析などもできるため、より具体的なプロジェクト管理が可能です。
またプロジェクト管理の専用ツールもあり、活用すれば一括管理や情報共有がよりスムーズになるでしょう。
一般的なプロジェクト管理ツールには、スケジュール管理、タスク管理、ガントチャート、工数集計、他システムとの連携といった機能が備わっています。
プロジェクト管理を複数担う方などは、専用ツールの導入を検討しても良いかもしれません。
プロジェクト管理(プロジェクトマネジメント)の研修・講習
プロジェクト管理を学ぶには、研修や講習を受ける方法があります。
以下が、有名企業が提供するプロジェクトマネジメント関連の研修・講習です。
研修・講習 | 概要 | 提供元 |
---|---|---|
PMコーチング+ | プロジェクトマネージャーとしての思考を修得することに特化した学習プログラム | パーソルホールディングス株式会社 |
プロジェクトマネジメント基礎研修 | 主に初めてプロジェクトマネジメントを担う方を対象とした基本的な内容の研修 | 株式会社インソース |
プロジェクトマネジメント標準 10のステップ | PMBOKに基づいたプロジェクトマネジメントのステップを体系的に学ぶ研修 | 株式会社リクルート |
プロジェクトマネジメントの基礎 | PMBOKに基づいた学習内容とともに、IT事例を用いた実践的な思考力を身につけられる研修 | 富士通株式会社 |
プロジェクトマネジメント研修 | 実務経験を持つ講師による実務に活用できるトレーニングを受けられる研修 | 日本電気株式会社(NEC) |
独学で学んだり、練習環境なしでいきなり実践したりするのが不安という方は、一度基礎から学べるプロジェクトマネジメント講習や研修を受けておくと安心です。
さらに本格的にプロジェクト管理について学びたい方や、IT業界の知識やスキルも身につけたいという方は、通信制大学などで専門的に学ぶのもおすすめです。
プロジェクトマネジメントを実践的に学ぶなら、開志創造大学 情報デザイン学部(仮称・設置構想中)
開志創造大学 情報デザイン学部(仮称・設置構想中)は、2026年4月開設予定の通信教育課程の学部です。一度も通学することなく大学を卒業することができ、「学士(情報学)」が取得可能です。
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情報デザイン学部の3つの学びとして「情報技術」「デザイン」「経営基礎」があり、情報技術を活用して、情報社会における課題解決と価値創造ができる能力を身につけた人材を育成します。
カリキュラムには、「プロジェクトマネジメント」や「経営学基礎」なども予定されており、経営において重要なプロジェクト管理についても基礎からしっかりと学ぶことができます。
通信制大学ということで、学び続けられるか不安に思う方もいるかもしれませんが、サポート体制が充実しており、いつでもチャット形式で質問ができ、原則24時間以内に返信が来るなど気軽に質問ができる環境が整っていたり、学修が遅れている場合は教員が個別でサポートをおこなうなど、安心して卒業まで学び続けることができます。
マネジメントについて基礎からしっかり学びたいという方は、ぜひ開志創造大学 情報デザイン学部(仮称・設置構想中)のWebサイトをチェックしてみてください!
まとめ
ビジネスにおいて重要な役割を担うプロジェクト管理の仕事。プロジェクト管理やプロジェクトマネジメントと呼ばれる仕事には、全体の把握やメンバー1人ひとりの管理など幅広いスキルが求められます。
プロジェクト管理には納期、期日を守るためと利益を最大にするためという2つの目的があり、それらを達成するために様々な手法が用いられます。
主なプロジェクト管理の手法としては、WBS(Work Breakdown Structure)、ガントチャート(Gantt chart)、アジャイル(AGILE)、ウォーターフォール(Waterfall)、EVM(Earned Value Management)があり、プロジェクト管理の世界標準であるPMBOKについても知っておくと、より効率的な管理が可能になります。
実際にプロジェクト管理をおこなうときは、目標の明確化、タスクの洗い出し、スケジュール作成、進行管理のステップで進めていきます。Excelやプロジェクト管理専用ツールを用いることで、より最適化された管理ができるでしょう。
また、プロジェクト管理について学びたい場合は研修や講習を受けたり、通信制大学などで学習したりすることがおすすめです。
キャリアアップを目指す方、仕事で活躍したい方は、プロジェクト管理について学んでみてはいかがでしょうか?