デジタル変革(DX)とは?メリットやリスク、推進の方法を解説
多くの企業が取り組みを進めている「デジタル変革(DX)」。企業がビジネス環境の変化に対してデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に製品やサービス、業務、組織などを変革し、競争上の優位性を確保することを指します。
本記事では、デジタル変革とは何か、重要視されている背景、推進のメリット、おこなわない場合のデメリットやリスク、重要な3要素、実施の流れ、成功させるための4つのポイントなどについて解説します。
デジタル変革について理解したい方、自社でデジタル変革(DX)推進の担当になっている方などは、ぜひ最後までご覧ください。
目次
デジタル変革(DX)とは何?
デジタル変革とは一般的に「DX(Digital transformation:デジタルトランスフォーメーション)」と呼ばれるもので、企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データやデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや組織、プロセス、企業文化・風土も変革し、競争上の優位性を確保することを指します。
DXとは単なるデジタルツールの導入ではなく、デジタル技術を変革の手段として活用し、製品やサービスの提供にとどまらず、プロセスの改善やデジタルを活用しやすい組織づくりに取り組むことで、環境変化の中でも企業が市場で成長し続けることを目指すものです。
デジタル変革(DX)の始まり
日本においては、1995年からインターネットが一般に普及し始めました。
2000年以降は世界的なIT革命を背景に、日本は世界最先端のIT国家を目指してインフラ整備を進め、2010年頃からは公共データや個人データにもデジタルデータを活用しています。
そんなデジタル化の歴史の中で、2004年にスウェーデンのウメオ大学のエリック・ストルターマン教授は論文で、「デジタル技術が社会に広く浸透すれば、人々の生活をあらゆる面で良いものへ変化させる」という概念を提唱しました。
この概念は現在、人々の生活にとどまらず社会全体を変革することを意味するものとして「デジタル変革(DX)」と呼ばれています。
デジタル変革(DX)とIT化の関係性
デジタル変革としばしば混同される言葉に「IT化」があります。
ITとは「インフォメーションテクノロジー(Imformation Technology)」の略で、IT化は企業や組織がデジタル技術を導入し、業務を効率化することを指します。
一方、デジタル変革とはIT化を手段として、ビジネスモデルそのものを変革することです。つまり、デジタル変革を進めるためには、IT化が必須になります。
デジタル変革(DX)が重要視されている背景
デジタル変革が重要視されている背景には、主に5つの理由があります。
- 事業環境の変化
- 働き方の多様化
- IT技術の進化
- 顧客行動の変化
- 生活の変化
それぞれ詳しく解説します。
事業環境の変化
事業環境が変わり、多くの企業がデジタルツールを活用するようになっています。
デジタルツールを取り入れず、アナログな手法で業務を続けていると同業他社に後れをとってしまう可能性があり、顧客獲得などあらゆるチャンスを逃すことにも繋がります。
事業環境の変化にともない、多くの企業にデジタル変革が求められているのです。
働き方の多様化
働き方が多様化していることで、デジタルツールの重要性が再認識されています。
テレワークやオンライン会議などを取り入れるには、デジタルツールの活用が欠かせません。
生産性向上のために働き方を見直す動きも高まり、企業はデジタル変革を推進する傾向にあります。
IT技術の進化
AIやビッグデータの活用に注目が集まり、一般企業でも手軽に利用できるようになってきたこともデジタル変革に大きく影響しています。
デジタル変革の土台となるデジタル技術の開発が急速に進んだことで、ビジネスシーンでAIやビッグデータが活用され始めました。
新しい技術を積極的に取り入れることで、企業の事業拡大や生産性向上などが見込めます。
消費者行動の変化
消費者がECサイト(※)やオンラインツールを日常的に使うようになり、企業もデジタル化への対応を求められています。
消費者と生産者をつなぐ手段がデジタル化し、オンラインでの商品やサービスの提供が拡大する中、企業側は積極的にデジタル変革を進める必要があるでしょう。
※ECサイトとは、インターネット上で商品を販売するウェブサイトのこと
生活の変化
新型コロナウイルスの流行をきっかけに対面での接触が制限され、テレワークやオンライン会議など、非対面での営業、販売手法の需要が急増しました。
新型コロナウイルスが終息した後も、多くの企業がオンラインでの商品やサービスを継続しています。
そして、こうした消費者の生活の変化や新たなニーズに応じ、企業も積極的にデジタル変革を推進しています。
デジタル変革(DX)推進のメリット
デジタル変革を推進することには、以下のようなメリットがあります。
- 自動化やデジタル化などによる業務効率化
- 業務を最適化したり自動化したりすることによる利益率の向上
- デジタル変革を進めている顧客や取引先など周囲の環境に柔軟に対応できる
それぞれ詳しく解説します。
業務の効率化
デジタル変革を推進することで業務を効率化し、生産性を向上させることができます。
情報のデジタル化や分析ツールの活用などにより、従来の業務にかかっていた時間や人員を大幅に削減できるでしょう。
例えば、ビッグデータを活用することによって、物流の効率化やシフトの調整、単純作業の簡略化なども可能になります。
また、業務の効率化は作業工程の短縮や人件費の削減、人的ミスの減少にもつながります。
利益率の向上
デジタル変革で業務を最適化したり、自動化したりすることで、少ない労力で高い成果を得られるようになります。
業務の一部を機械に任せることで、社員1人当たりの生産性を高めることができ、利益率の向上にも繋がるでしょう。
環境への対応
自社のデジタル化を進めることで、顧客や取引先といった周囲の環境に柔軟に対応できるようになります。
デジタル変革が遅れると、既にデジタル化を進めている顧客や取引先との契約、販売、営業などさまざまな場面で支障が出てしまう可能性があります。
自社内の効率化だけでなく、顧客や取引先とのスムーズな連携が図れる点も、デジタル変革の大きなメリットです。
デジタル変革(DX)をおこなわないことで生まれる4つのリスク
デジタル変革をおこなわないと、以下のようなリスクがあります。
- 多様化するビジネスモデルにおけるニーズへの対応不足
- 最新のビジネスモデルに適応できないことによるビジネスチャンスの喪失
- 紙媒体での管理などを継続することによる業務効率の低下
- セキュリティが最適化されていないことにより情報漏洩やサイバー攻撃の危険がある
ニーズへの対応不足
ビジネスモデルが多様化する現代において、デジタル変革を推進しない企業は競争力の低下や市場シェアの喪失など多くのリスクをもちます。
企業は市場や顧客のニーズに絶えず応える必要があるため、デジタル化が進む環境に対応できなければ、ニーズに応えることは難しくなるでしょう。
結果として、新規顧客の獲得や既存顧客の維持が困難になり、収益の減少など大きな問題を引き起こす可能性があります。
ビジネスチャンスの喪失
デジタル変革を推進しないと、最新のビジネスモデルに適応できず、貴重なビジネスチャンスを逃してしまうリスクが高まります。
デジタル変革によって得られるデータや顧客のニーズなどを活用しないままでいると、新しいビジネスチャンスを逃してしまい、企業にとって大きなリスクと言えるでしょう。
業務効率の低下
デジタル変革が進み、紙の資料のデジタル化や情報のデジタル管理が一般的になる中、これらをアナログのまま行っていると業務効率が大きく低下してしまいます。
生産性向上やリスク削減のためにも、単純作業やデータ収集・分析などは機械に任せると良いでしょう。
セキュリティ面のリスク
情報漏洩やサイバー攻撃など、デジタル技術を用いた犯罪は急増しています。このような中で、デジタル変革を実施しない企業には大きなセキュリティリスクが発生することになります。
サイバー攻撃や悪意あるソフトウェアの侵入などから自社を守るためにも、デジタル変革を進め、最新の対策ツールなどを導入することでセキュリティを強化していきましょう。
デジタル変革(DX)に重要な3要素
デジタル変革を推進する際、重要な要素は主に以下の3つです。
- 手作業のデジタル化など、物理的な変化
- 導入するITのレベルに合わせた人材の確保
- 制度や慣習を現状とすり合わせて見直す
それぞれ詳しく解説します。
物理的な変化
物理的な変革とは、手作業で行ってきた業務をデジタルに移行することを指します。
例えば、紙媒体で管理していた記録のデータ移行やAI・機械学習の実装などが物理的な変革要素にあたります。
人材の確保
AIや機械学習によって、人間の思考に似た高度な分析が可能になったため、求められる人材のレベルが高まっています。
ITの発展によって、データサイエンティストやデータアナリストの役割は変化し、プロフェッショナルレベルの知識や技術を持つ人材が求められているのです。
制度や慣習の改革
制度や慣習の改革とは、デジタル変革を妨げる可能性がある制度や慣習を見直すことを指します。
デジタル変革が進むと、労働者は新たなデジタルツールとともに業務をこなすため、デジタルテクノロジーの用途やレベルによって人間の役割が変化します。
働き方や社内の基盤となる部分がデジタル改革によって変化するため、現状にそぐわない古い制度や慣習は見直す必要があるでしょう。
デジタル変革(DX)実施の流れ
実際にデジタル変革を実施する際は、基本的に以下のような流れで進めます。
- ビジョンの設定
- 方向性の明確化
- 成熟度の評価
- 既存のデジタル機能の評価
- ロードマップの構築
- デジタルビジョンの推進
以下で、各ステップについて詳しく解説します。
ステップ①ビジョンの設定
まず、デジタル変革を進める目的と目標を明確にしましょう。
なぜデジタル変革が必要なのか、変革後のビジョンを定めることでスムーズに変革を進めることが可能になります。
ステップ②方向性の明確化
ビジョンを定めたら、次に方向性を明確にします。
自社の状況を踏まえて何をデジタル化するべきなのか、どのようなデジタルツールが必要なのかといった方向性を明らかにしましょう。
ステップ③成熟度の評価
デジタル変革をおこなう上で、自社のデジタル成熟度を評価することは重要です。
自社がどの程度デジタル機能を活用しているか、どのようなところでテクノロジーと業務の改善が必要かなど、さまざまな側面から自社のデジタル成熟度を評価しましょう。
ステップ④既存のデジタル機能の評価
自社にある既存のデジタル機能にどのような課題があるか、または適切に管理できているかを把握することで、デジタル変革に必要なものを探すのに役立ちます。
業務とデジタル機能の現状を正しく把握して評価し、課題の洗い出しなどをおこなうことで本当に必要なツールやシステムを見つけることができるでしょう。
ステップ⑤ロードマップの構築
ステップ①から④に基づいて、デジタル変革を達成するまでのロードマップを構築します。
このロードマップは、現実的かつ予算内に収まり、リスクを最小限に抑えつつ、利益を最大化することを意識して作成しましょう。
ステップ⑥デジタルビジョンの推進
ロードマップに基づき、実際にデジタル変革を進めていきます。
必要かつ優先順位が高いものから順にデジタル化を進め、自社のデジタル変革を進めてください。
変革中にロードマップを変更する必要性が生じた場合、その問題に柔軟に対応しつつデジタル変革を推進しましょう。
デジタル変革(DX)を成功させる4つのポイント
デジタル変革を成功させるためには、以下のポイントをおさえておきましょう。
- 顧客ニーズの理解と対応
- データ活用と分析の強化
- 速やかな意思決定と実行
- 外部との協力
デジタル変革の成功のためには、顧客ニーズを正しく理解し対応する必要があります。
顧客ニーズの理解のためには、データ活用と分析を強化する必要があるでしょう。ハイレベルなツールの活用に合わせ、専門知識や技術を持った人材を採用するなどの対応も必要です。
また、デジタル変革を進めるには速やかな意思決定と実行力が求められます。組織全体を滞りなく動かすために、リーダーシップのある人材をトップに配置しましょう。
社内のみでデジタル改革を推進するだけでなく、外部の専門家やパートナーと協力して広い視野と正しい知識をもって取り組むことも重要です。
以上の4つのポイントを抑え、自社のデジタル変革を成功へと導きましょう。
業界別|デジタル変革(DX)の実例
デジタル変革の実例を、業界別で3つ紹介します。
- 製造業
- 小売業
- 医療業界
製造業のデジタル変革
製造業はIoTを活用した業務改善によって、高品質な商品の生産、廃棄率の低減、効率と収益の向上などの成果を上げています。
具体例としては、株式会社ブリヂストンの「技能伝承システム」による新人育成や、味の素グループの包括工程管理システムの開発・導入によるスマートファクトリー(※)化などが挙げられます。
※スマートファクトリーとは、AIやIoTなどの最新技術を用いて、製造現場のデジタルデータをもとに作業効率化や生産性の向上を実現した工場のこと
小売業のデジタル変革
小売業はデジタル技術の導入により、高度なデータ分析を活用して個々の顧客のニーズに対応することが可能となっています。
具体例としては、株式会社良品計画のアプリ「MUJI passport」が挙げられます。
オンライン決済サービスの導入により、キャッシュレス、カードレスでの支払いを可能にするとともに、店舗とEコマース(※)の顧客情報を一元化することで買い物や検索をスムーズにし、顧客満足度を向上させています。
また株式会社ファーストリテイリングのアパレルブランドであるユニクロでは、無人レジを店舗に導入したり、実店舗と通信販売を融合させたりと、「欲しいアイテムをスムーズに購入したい」という顧客ニーズに対応したデジタル変革を実現しています。
※Eコマースとは、インターネットなどで契約や決済を行う取引形態のこと
医療業界のデジタル変革
医療業界では、デジタルツールを活用してコスト削減や患者の受診記録の電子化などを進めています。この他にも、バーチャル医師訪問やネットワーク化された医療機器記録など、医療現場でのデジタルツールの活用促進が急速に進んでいます。
病院で続々と導入されている電子カルテ、受付や予約のロボット化、事務作業のデジタル化も医療業界のデジタル変革の代表例です。
デジタル変革(DX)に関するよくある質問
デジタル改革に関するよくある質問についてご紹介します。
Q.デジタル変革は小規模企業でも実施できますか?
A.実施できます。
デジタル変革とは必ずしも大規模で高価なツールの導入を指すものではありません。例えば、紙媒体をデジタルデータに変換し、適切に管理することもデジタル変革の一環と言えます。
実施可能な範囲で、デジタル変革を進めていきましょう。
Q.デジタル変革の支援はありますか?
A.あります。
多くの企業が、デジタル変革を支援するサービスを提供しています。デジタル変革を検討していて、支援サービスを活用したいという方は、ぜひチェックしてみてください。
- 株式会社日立コンサルティング
- 富士通株式会社
- 株式会社NTTデータ
- 株式会社電通デジタル
- 株式会社サイバーエージェント
- アクセンチュア株式会社
- 株式会社モンスター・ラボ
- 株式会社クレアスバリュー
- DX総研
- デロイトトーマツコンサルティング
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まとめ
一般的に「DX」「デジタルトランスフォーメーション」と呼ばれる「デジタル変革」。企業がビジネス環境の変化に対してデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に製品やサービス、業務、組織などを変革し、競争上の優位性を確保することを指します。
デジタル変革が必要な理由には、事業環境の変化、働き方の多様化、IT技術の進化、顧客行動の変化、生活の変化の5つが挙げられます。デジタル変革は情報化社会で企業が持続するために重要であることを改めて認識しておきましょう。
デジタル変革には業務効率化、利益率の向上、環境への対応の3つのメリットがあります。また、デジタル変革を進めなければ、ニーズへの対応不足、ビジネスチャンスの喪失、業務効率の低下、セキュリティ面のリスクといったデメリットがあるため積極的に推進しなければなりません。
デジタル変革において重要な要素は物理的な変革要素、認知的な変革要素、文化的な変革要素の3つです。実際にデジタル変革を実施する際には、3要素についても意識しておきましょう。
デジタル変革を成功させるには、顧客ニーズの理解と対応、データ活用と分析の強化、速やかな意思決定と実行、外部との協力の4つが重要な鍵になります。
本記事で紹介した実例も参考にしつつ、自社のデジタル変革を成功に導きましょう。